そして問題は、隣で欠伸をさっきから何度も噛み殺している如月くん。
この人がまあ、私の人生の中で1番厄介な奴だ。
如月くんとの出会いは、簡単。
婚約者としてお父様に紹介された私の片想いの相手(長かったかも)・キクくんの友達だから。
廊下でキクくんの姿を見る度、用事もないのに話しかけていれば自然と、キクくんと一緒にいる如月くんも見かけるのだ。
如月くんはキクくんから、私たちの関係を知っているようだ。
この如月くんもキクくん同様、私が出会った男たちの中では珍しく、向こうから勝手に話してこない。
如月くんは決して自分から名乗らないし、如月北斗という本名はキクくんから聞いた。
眠そうにしているのが殆(ほとん)どで、会話も必要最低限。
だけどこの如月くん、喋るともっと厄介。
黙っていても厄介なのに、喋るとまあ大変だ。
眠そうな目をしているくせに、如月くんはかなり鋭い。
私が婚約者という関係以前にキクくんを好きなことを、言ってもいないのに見抜いたりしている。
そしてたまにキクくんがトイレに行ったりなどふたりきりになると、核心につくようなことをバンバン言いだすのだ。
以前の放課後、キクくんが先生に呼ばれて職員室に行った時。
私は一緒に帰りたくて誰もいない教室で1人、キクくんの帰りを待っていた。
そこへ現れたのが如月くん。
どうやら忘れ物をしたらしい。
『何しているんスか?おたく』
そういえば、出会った当初から如月くんは他とは違った喋り方をしていたなぁ…。
何であんな古めかしいのか今時なのかわからない喋り方しているんだろうか?