…本当に、よくわからない。
だから苦手なのだ、私は。
正直、コイツが美空とキクくん、ふたりでジュースを買いに行けば良いじゃんと提案した時、私は闇の中に突き落とされた気分になった。
それは少し大げさな表現かもしれないけど。
そう思ってしまったのだから仕方ない。
私は自分の意見に素直に生きる女なのだから。
私は嘘をつくのが大嫌いなので。
素直に思わせてもらうけど。
今まで男子に困ったことはない。
何もしないでボケッとしているだけで話しかけられることが多かった。
そのせいで女子には嫌われ続け、今では美空が唯一の女友達だけど。
男子には困ったことがなく、逆に溢れすぎていらないと思うのが現実だ。
そんな男にモテ続けている私が、今までの人生の中、向こうから寄ってこなかったのは、キクくんとこの如月くんが初めてだ。
キクくんとはお父様の縁で出会い、私が現在片想いをしている相手だけども。
きっとお父様という存在がなくちゃ、私は一生キクくんと知り合っていない。
同じ学校だから廊下ですれ違うことが多く、私は出会う前からキクくんの存在を知っていた。
キクくんが私を知っていたかどうかは不明だけど、キクくんは他の男たちとは違い、決して向こうから近寄ってこなかった。
私の周りに溢れんばかりにいる男たちのように、向こうから勝手に聞いてもいないのに名前を言い始めたりなんて、絶対にしなかった。
私のことを「真帆」と呼び捨てで呼ぶのも、私からお願いして呼んでもらっている。
だから正直、キクくんが本当に私を好きなのかはわからない。
他の女子―――例えば美空が好きなのかもしれない。
でも私はキクくんが好き。
婚約者だとお父様に紹介されなくても、私はきっとキクくんが好きになっていた。
キクくんが誰を好きでも。
諦めない自信が、私にはあった。