「もしかしたら私以外の人と結婚するかもしれないの。
それで新しい彼女さんと、自分の会社を告ぐんだと思うの」
「…………」
「私は、婚約者って関係をなしにして、キクくんが好きなの。
だけどキクくんは優しくしてくれるけど、きっと私を婚約者って壁をなしでは見てもらってない気がするわ。
お父様の知り合いの娘だから、優しくしてくれるだけだと思うの…」
「………………」
「私、いつかキクくんに振り向いてもらえるかしら…?」
綺麗な青空を真帆が眺めたところで、学校に着いた。
真帆とは教室が違うから、下駄箱で別れてしまった。
真帆と別れて、下駄箱から教室へ向かう。
いつもはよく人から
「歩くの早いね」って言われるあたしだけど。
今日はトボトボ歩いた。
婚約者と言う、壁。
真帆はそれを気にしていた。
だけど、それを気にするのは、あたしも同じ。
あたしはきーくんに、自分の気持ちを伝えられないんだ。
婚約者で、きーくんを一途に思う、真帆がいるから。
気持ちを伝えたらきっと、きーくんは困ってしまう。
真帆も傷つけてしまう。
きーくん、覚えていますか?
あの時の、10年前の、約束を―――。