「ねぇ、翔太?」

ズボンのチャックを締めながらあん?っとこちらを向く。

「明日は?仕事?」

まあな、そう目線をそらしながらいうのは昔と変わっていなかった。

布団の中からミニテーブルに置かれたテレビのリモコンを取ろうとする。

「布団の中から全裸の女が手を伸ばしてるのってだいぶエロいな。」

そういいながら、私にリモコンを渡してくれる翔太。

私は聞こえなかったかのようにテレビから目線を離さなかった。

「じゃ、また来るわ。」

そう言いながら私の頭をわしゃわしゃと撫でて私の部屋を出て行った。

私たちは付き合っているわけではない。

2年前の純粋に彼を愛していた私はどこへ行ったのだろうか。

手に入れたいという欲求だけが打ち勝ち、それが翔太の欲求を満たすのと合致したのだ。

ただの需要と供給。

もう翔太のでる雑誌を買うことはしなくなっていた。

一月に何冊もの雑誌に出ているためきりがなくなったのと、既に手に入れてしまって冷めてしまったのが理由かも知れない。

けれどこの頃の私はただ片思いをしていた頃の私より、彼を遠くに感じていた。

身体はこんなに近くにあるのに、心はとても遠い。

テレビに映る翔太を見るたびに心が締め付けられる。

あなたの事なんて好きじゃないという態度をとる私と、それが嘘と気がつきながら気がつかないふりをする翔太。

なんて歪んだ関係なのだろう。

私の腕に付けられたゴツい男物のブレスレットは〈俺のもの〉という証らしい。

それは、愛ではなく、ただの独占欲だ。