私はしょーちゃんが私の家から出たのを確認し、玄関の収納にしまった本を取り出して部屋で開いた。

パラパラとめくり、目次を開く。

小さく書かれた文字を見つけ、そのページを開く。

"海上翔太"

そう大きく書かれたページだ。

「わぁー、こんなに大きく書かれてる。」

思わずその文字に見入ってしまった。

しょーちゃんは舞台やたまにテレビに出たりする俳優をしていた。

しょーちゃんが中学生の時にスカウトされて、コツコツ活動をしてきて、最近少しずつ有名になり始めたのだ。

「かっこよくなっちゃったなぁ…」

インタビューの文章を読んで雑誌を閉じて、ベッドの上に置いた。

本棚を眺める。

「3巻ないなぁ…」

目頭が熱くなるのを感じた。

「忘れちゃったんだ…」

熱い涙が頬をつたった。


『茉由ちゃん、このページ見て?』

しょーちゃんが開いて見せているページには、女の人が泣きながら指につけられた指輪を見つめているシーンだった。

『どうしてこの人泣いてるの?』

なにもわからない私は尋ねた。

『すっごく好きな人とずっと一緒に居られる証なんだって!パパがこの間言ってたんだ。』

一つ前のページに戻す。

『ほらここ、ずっと一緒にいることを結婚って言うんだって!』

『私も結婚したい!』

私が前のめりに言う。

『茉由ちゃんは僕と結婚するでしょ?』

意味のわからない私は大きく頷いたのだ。

__ガタン

しょーちゃんの腕にぶつかり、テーブルの上に置かれたオレンジジュースが倒れてしまった。


そのこぼれたジュースはあっという間に漫画にし染み込んでしまった。

『ごめんね、茉由ちゃん。』

しょーちゃんのお母さんは私の目線に合わせてなんども謝ってくれた。

『ま、しょうがないよ、もうこれ呼んだんでしょ?』

お姉ちゃんが全然平気と言いながら頷くと、お母さんは乾燥させて、資源ごみとして出してしまったのだった。

お姉ちゃんは大学生になると同時に一人暮らしを始め、今では昔のお姉ちゃんの部屋が私の部屋になっていた。