あたしは、漸の隣に座る。
「あたしはね、ちっちゃい頃に両親死んじゃって。両親の高校時代の担任の先生が、あたしを引き取ってくれたの。お父さんもお母さんも早くに死んじゃってさ。お父さんが19。お母さんが22かな。あたし、両親が高校生の頃の子供だったんだー。」
漸はひとことも話さずに聞いてくれてる。
「で、その引き取ってくれた先生がここの理事長先生。前の高校でいろいろあって、ここに入れてくれた。すっごいいい人でしょ?」
「あぁ。あのじいさんだろ?」
「そそ。あたしの大切な人っていうのは、豪って名前なんだけど、あたしが14のとき、豪が18のときに知り合ったの。豪、あたしにベタ惚れでさ、ロリコンなのかもって真面目に悩んだりしてて」
やばい。
「でも、あたしは素直じゃなくて照れ屋で、大好きなのに言えなくて。豪が他の人のところに行っちゃうかもってなったとき、不安で悩んでたら、豪入院しちゃって。起きなくて。まあ、結局他の人のところに行っちゃうかもっていうのはあたしの勘違いだったんだけどね。」
言葉にすると、涙が出る。
「それから2年経って、あたしが16で豪が20。あたしが、豪の2年を奪った。これから歳が進む事に時間を奪ってくことになって、もし、もし………………」
ずっと、言葉にしたくなかったこと、
いままで一度も口にしなかったこと、
それが本当になっちゃったら、
あたし、生きていけないから。