この持久走の長さは自己ベスト更新したと思った。
そう思ってしまうほど、理人の病室へと向かう道を走りに走った。




『理人が心拍・血圧低下してきて、危険な状態だと病院から電話がきた』




お義父さんから出た言葉が衝撃的過ぎて、頭が真っ白になった。




冗談でしょ?
さっき思いっきり頭をぶつけたから、お義父さんの言葉は幻聴なんだよね?




お義父さん本当は『皿をいっぱい割っちまって、母ちゃんに夕飯抜きにされた!助けてくれ』って言いに来たんでしょ?




そう思いたかった。
そう思っていたかった。




でも理想は現実にはならなくて。
お義父さんのあの必死な悲しい表情を見たら、お義父さんの言葉が現実なんだと痛感した。




「…理人!!」


「…ハァ、ハァ…」




お義父さんが理人を呼びながら、病室の戸を思いっきり開ける。
私は息を切らしながらお義父さんの後に続いて、病室に入る。




病室に入った瞬間、胸が苦しくなって動けなくなった。
たくさん走って息切れがすごいから苦しいのか、理人がどうなるのかが怖くて苦しいのか分からなかった。




このままだと呼吸の仕方が分からなくなって、息が出来なくなりそう…
息をするのが…苦し、い…




「…大丈夫よ」




横から肩を抱かれたためその方を見ると、先に来ていたお義母さんが私の隣にいた。
お義母さんは私の方は見ずに、ただ真っ直ぐに理人がいる方を見ていた。




「大丈夫だから、ゆっくり歩きなさい」




お義母さんの声を聞いたら、呼吸は段々落ち着いてきてゆっくりと歩くことが出来た。