「萌〜今日、暇?」
暇、だけど…
そう答えてはいけないと、本能がそう叫んでいる。
「何かあるの?」
「うふふふ」
まさか…
「合コン‼︎しかも相手は塔山大学‼︎」
やっぱり…
春がこんなにニコニコして何かに誘ってくるときは大抵合コンだ。
「悪いけど…」
「お願い‼︎今日だけでいいから。親友のために一肌脱ぐと思って。しかも塔山大学はイケメンが多いって有名じゃん?萌にも新しい出会いがあるかも‼︎」
断ろうとしたら、春は捲し立てるようにお願いしてきた。
「春、この前の合コンで気になった人はどうしたの?」
あんなに運命感じただの何だの言ってたのに。
「あー、なんかめんどくさそうな人だったからやめた〜」
「あ、そう」
「ね、そんなことよりお願い、萌‼︎」
合コン、か。
大学生になって2年も経つけど、一度も行ったことないな。
恋愛なんてもう懲り懲りだし、何より認めたくはないけど忘れられない人がいるから。
「ね?萌」
でもそのことを知っている春がここまで誘ってくるのは珍しい。相当、困っているのか。
春にはいつもお世話になっているから。
「分かった。その代わり今日だけね」
ーーそう思ったのが間違いだったのかもしれない。
「ホント⁈ありがとう‼︎あー、もう、良かった〜」
…あれ?
今更だけど、春、"塔山大学"って言わなかった?
まあ、でも…いっか、別に。
そうだったとしても彼に会う確率なんてほとんどないだろうし、それにこんなに喜んでいる春に「やっぱり行かない」だなんて言えない。
「じゃあ萌‼︎5時に駅前に集合ね‼︎」
そう言われて5時になる10分前に駅前に着いたけど。
「…マジか…」
やっぱり私みたいな人は合コンに来るべきじゃないな、ということを改めて実感させられた。
「あ、萌〜」
そう言って手を振る春は一瞬誰だかわからないくらいおめかしをしていた。
他の3人の女子もすごくめかしこんでいることがわかる。
「じゃあ萌もきたことだし、行きますか‼︎」
春と他の3人は遠足に行く小学生かのように、ルンルンで合コンの場所へと向かった。
「あ、春ちゃ〜ん」
目的地であろう場所に着くと春に手を振る金髪君。
彼と同じテーブルにもう3人男の人がいて、どうやら彼らが今日のお相手みたいだ。
隣で知らない女の子が「塔山大はやっぱりレベル高〜い」って喜んでいるから、昼間のは聞き間違いじゃなかったっぽい。
「あれ?4人だけ?5人って言ってなかった?」
「ああ。もう1人は遅れてくる。超イケメンだぜ?なんせ去年と今年のMr.塔山だからな」
金髪君がそう言うと他の3人も同意した。
「でも女に全く興味ないよな?あいつ。この前もMs.塔山の先輩の告白をばっさり」
「なんか忘れられない女がいるんだってよ」
「今日だって無理やり誘ったようなもんだし」
………
よくわからないけど、合コンの場でそのような話しをするのは…