食べている間も、俺は梨沙が気になって仕方がなかった。
ついつい、梨沙に見とれてしまう。

目が合うと梨沙は恥ずかしげに笑った。

そして、2人とも、やっと食べ終わった。梨沙が「じゃあ、そろそろ行く?」
と言った。
けれど俺は、「ちょっと待って」と呼び止めた。

「え?どうかした?」

「ううん。あのさ、なんか忘れてないかな?」

「忘れてるって…あっ」

「デザートがまだ来てないんだ」

「そうだね」

梨沙は再び席に着いた。

そう、デザートが、プチマンゴーデザートが来てないことを俺はすごく気にしてた。
メニューを見たときから、あのデザートが食べたくて仕方なかったし、梨沙にどうしても食べてもらいたかった。

それに俺は甘党だから、デザートのことを人一倍、気にしてしまうのだ。

俺は店員さんを呼ぼうと思って、ベルを押した。

そして、店員さんが来た。

「あ、あ、あのぉ…もし、お邪魔でなければ、あの、その…食後のプチマンゴーデザートを持って来てくれませんか?」

俺がしどろもどろにそう言うと、「はい、かしこまりました」と言った。

はあ…デザートのことを言うだけなのに、俺はすごく店員さんに申し訳ない気持ちがしてしまった。
何故なら、店員さんがすごく忙しそうにしていたから。
店員さんが去った後、しばらく考え込んでいると、

「ふふっ、中林君、可愛いなあ」

と梨沙が柔らかく笑った。

また、俺の胸が高鳴った。

そして、ふと俺は

「梨沙」

と言ってしまった。

あ、と思っても遅かった。
呼び捨てで呼んでしまった。
もう、恥ずかしくて仕方なかった。

梨沙は顔を真っ赤にしていた。

「中林君…なんか呼び捨てで呼ばれると照れるよ」

「ごめんね、ダメだったかなあ…」

「ううん。むしろ嬉しい」

「本当!?そっか、良かった。あの、もし迷惑でなければ…あのぉ、俺のことも呼び捨てで呼んでほしいんだ。下の名前で」

「え!?うん…竜介」

梨沙は顔を真っ赤にしながら、上目遣いで俺を呼んだ。

ああ、もう俺の感情は溢れそうだ。

梨沙が好き。

この気持ち、溢れそう。

「梨沙、俺、梨沙のことが…」

好きだと言おうとした瞬間、

「お待たせしました」

と店員さんの声が遮った。

ああ、言えなかった。

デザートが来たのはいいけど、タイミングが悪かった。

ああ、店員さんには悪いけど、あともう少し運ばれてくるのが遅ければ、俺は梨沙に好きだと言えたのに…。

悔しくてならなかった。

俺はプチマンゴーデザートを頬張りながらそう思った。

そして、俺の向かいでプチマンゴーデザートを頬張る梨沙を見て、俺はある決心をした。

食事が済んだら、梨沙に告白しよう、と。