「残念ですが....」



運転手と拓真が病院に運ばれ
もちろん彼の御両親、
夏芽、夏芽の御両親、
茉莉の御両親も呼ばれた。




「運ばれた時点で既に.....」



そう告げる医師が
拓真の御両親の方を見ている。




そう、亡くなったのは
拓真だった。


運転手は腕と足を複雑骨折する
重傷を負ったが、意識もあり無事だった。



一方拓真は病院に運ばれた時には
もう既に息を引き取っていた。

恐らく茉莉にキスをしたすぐ後に
もう亡くなっていたのだろう.......





「まりちゃん....」

目を真っ赤に腫らし、
呆然と立ち竦む茉莉に
拓真のお母さんが呟いた。



「まりちゃん。拓真の事故は
まりちゃんのせいじゃないわ。」


茉莉はただ俯いて、聞いていた。


「あまり自分を責めなくていい。
あなたも苦しいと思うから。」

何も言えなかった。


「でもね、今は
あなたの顔を見るのは辛いのよ。
ごめんなさい...帰って貰えるかしら...」



「ーーっ。......はい....っ」



「茉莉!!!」




茉莉のお母さんと夏芽が
茉莉を呼び止めるが
逃げるように病室を出た。




〝あたしっ....
取り返しのつかないことを...っ!!!〟


拓真を殺してしまった、と
自分を責めた。

つい数時間前まで
笑顔だったふたり。




もうその面影もなく、
哀しく闇だけが残った。