ああ、夏だな。

 新幹線から降りると、一気にむわっとした空気が私を包んだ。
 ただでさえこんな空気なのに、これからもっと田舎の方へ行くんだ、と思うとなんだかくらくらしてきた。

 ホームから中に入ると、一気に涼しい空気が服の隙間隙間から流れ込んできて鳥肌が立つ。新幹線の中とは違い、完全に冷房効き過ぎだろ、というくらいで肌寒い。また外に出るとなると、きっと更に暑苦しく感じるんだろうな、と思うと憂鬱になった。







「えらいわねー、深雪(ミユキ)とは大違いだわ。…ああ、ごめんなさいね」

 深雪。母さんの名前を口にしたが、バックミラー越しに見えた私の顔が暗くなったのだろう。伯母さんは慌てたように私に謝った。

「いえ、大丈夫です」

 そう愛想笑いに近い笑みを浮かべると、安堵したように優しい笑みを浮かべた。

 この、いま私が乗り込んだ赤い丸みを帯びた車は伯母さんの車で、私が小さい頃から大事に使っている車だ。母さんと一緒に選んだらしい。
 不意に伯母さんが目を細めて、つぶやいた。

「去年、急だったものねえ」

 走り出した車の中、わたしは俯く。







 私がこうなったのは、きっと母のせいだ。

 バックミラーに映り込む自分の顔に吐き気がして、また俯いた。
 今頃街中からもう山の方へ差し掛かったのだろう。ねむいな、と横に倒れこむ。私はそのまま意識を手放した。