それからもう、何年経っただろうか?
私はもう、そんなお伽噺を信じるような年でも性格でもなくなった。
「詩織、チケットはちゃんと持った?」
「ホームに来た時点で持ってる」
「ほんとうに一人で行くのかい?僕は行かなくて大丈夫?」
「行けるってば」
大きめのキャリーバッグと菓子折りなんかが入ったカバンを肩にかけると、父さんは心配そうな顔で私を見た。「大丈夫だから」そう何度も念押しして言うと、うんうん唸りながらも納得したようだった。
「じゃあ、新幹線を降りたら電車を乗り換えて、お義姉さんにお義父さんの所まで連れてってもらうんだぞ」
昨日の昼からなんども聞かされたそのセリフにうんざりしながら、うんうんわかったと頷くと、むっとしながら父さんは私を見た。
「いいかい?ちゃんと礼儀正しく、だからね?」
「わかってるよ、じゃあね」
ちょうど目当ての新幹線が着いて、父さんに手を振る。わたしはうんざりしながら乗り込んで、指定席に座った。
そこはやっぱり二人席で、周りを見渡す限り人が多いから時期にここも埋まるんだろうな、と思った。私には、ただただ隣に出来るだけ若い、清潔感のある人が乗りますように、といま横を通り過ぎたオジサンを見ながら祈った。