小さい頃、母はよく昔話をしてくれた。
『母さんのおうちの近くの山にはね、山神様がいるのよ』
『やまがみさま?』
『そう、山神様。それはね、とっても綺麗な人なのよ』
そう言って母はいつも、おとぎ話を聞かせてくれた。
昔々、あるところにお姫様と神様がいました。
お姫様は大変美しく、お姫様のお父様が「こんな綺麗な娘を誰かにさらわれては困る」といって山の上に閉じ込めてしまいました。なので、山の頂上にひとりで暮らしていました。
そのころ神様は、「醜い子はいらないよ」と綺麗な母神様に嫌われて、お国から追い出されててしまいました。行くあてもなにもなく、悩んだ神様は、お父さんになるのが憧れだったので、お嫁さんをさがす旅に出たのです。
そして、神様がある山を登ると、なんてまあ可愛らしいお姫様がいるじゃありませんか。
神様は、お姫様を見てひと目で恋に落ちました。
お姫様も、神様を見てひと目で恋に落ちました。
美しいや醜いなんて、お互い考えもしませんでした。
すぐにふたりは山から逃げて、もっと大きな山に一軒家を構えました。
そこで生まれたのが、小さい小さい山神様でした。
その子は神様に似て大変醜く、それでもふたりにとっては大事なこどもでした。
それから数年後のことです。
やっとお姫様の居場所を突き止めたお父様がやってきました。