「香澄、どうしたの?

ねぇ、香澄!」




母が私の悲鳴を聞きつけて、リビングの方から、私に声をかけてきた。




私は母の言葉に答えたかったが、目の前にいる夏希が恐ろしくて、母に返事をする余裕もなく、体が震えて仕方なかった。




〈 お母さん、早くここに来て!

そうじゃなきゃ、私は殺される…… 〉




私がさっき振り払った夏希の手が、再び私の首に回り、私の首を絞めつけ始めた。




私は苦しくて、夏希の手をつかみ、必死に夏希の手を振りほどこうとしたが、夏希の力は強くて、夏希の手は振りほどけなかった。




夏希は血走った赤い目を見開き、私が苦しんでいるのをうれしそうに見つめていた。




〈 夏希、あんまりだよ。

夏希が私を憎むのって、おかしいよ。

私を殺せば、夏希は幸せになるの?

夏希、止めてよ!

私は死にたくない! 〉