転校初日、不安と期待の入り交じる中、これから通う学校へと母に送り届けられた。
玄関で靴を履き替えて、私の名前の書いてある下駄箱に靴をしまう。
少し息を整えてから、突き刺さるような周りの視線を無視して職員室へ向かう。
途中迷子になってしまい…、なんてことはなく、案外簡単に職員室に着いてしまう。
出会いを期待していた私は、少しだけ肩を落とした。
「あ、倉井 美澄さん?
私、あなたのクラスの担任の、津島と言います。
よろしくね。」
朗らかに笑う津島先生に笑いかけ、2人並んで教室へと向かう。
その間津島先生はいろいろな質問をしてきてくれて、緊張を和らげてくれた。
津島先生は、気の利く年配の先生だ。
教室の前まで来ると、先生に言われて呼ばれるまで扉の前で待っていた。
その間、何度も深呼吸をし、何度も台詞を確認して、緊張を和らげる。
不安もある、期待もある。
しかし何より、友達を作らなきゃという使命感が大きかった。
気付けば先生が教室の扉を開けて、
「おいで」
と手招きしていた。
新しい環境に、また一歩足を踏み入れる。
「ほら、挨拶して」
と先生に急かされ、私はみんなの方を向いた。
みんなの視線が一気に私に集まって、心臓の音をうるさくさせる。
「えと、倉井 美澄です。
よろしくお願いします。」
考えたわりには地味でありきたりな挨拶になってしまったが、仕方がない。
「じゃあ倉井さんはあそこの席に。」
先生に言われた席に着く。
廊下側の一番後ろ。
ふと周りを見渡してみると、この席の周りには女子が多くて安心した。
人見知りというわけではないけれど、女子の方が仲良くなりやすいからだ。