テスト週間中、何回かこのはと勉強会をして一生懸命勉強に取り組んだ。
そのおかげか、テストは結構手応えがあった。
だいぶ出来た方だとは思う。
家に帰って問題用紙を見ながら、満足げにため息をついた。
そうしてカレンダーを眺めてまた1つ大きなため息をついた。
…後1週間ほどしかない。
必ずしも死ぬわけではないけれど、できるだけこの1週間でやりたいことをやれるだけやろうと決めた。
今まではテストやらなんやらで全然できなかったけど、これからあと1週間は暇だからできるはずなのだ。
紙を取り出してやりたいことを書き出していく。
そうしてできないことにチェックをいれて、特にやりたいことに丸をつけて、リストとしてまとめていく。
まずは陽翔くんに告白しよう。
それから、このはとどっか遠くに出掛けたい。
遊園地とか、動物園とか、どこでもいいから遠くに行ってはしゃぎたい。
あとまたプリクラも撮りたいかな。
それから、お母さんとお父さんと、このはと陽翔くんと静葉ちゃんたちへ手紙を残しておこう。
やることをまとめてそれを眺めながら、準備する物やそれをやる日やらまとめていく。
明日は金曜日だから、とりあえず勇気のあるうちに陽翔くんに告白して、明日このはを遊びに誘うことにした。
次の日、いつも通り2人並んで登校する。
話に切りがついて会話が途切れた時、すかさずそういえばと話を持っていく。
「ねえ、明日か明後日どっか遊びに行かない?」
首を傾げて尋ねてみると、このははぱぁっと明るくなって、
「行きたい!何処行く?!」
と思い切り食いついてきた。
キャピキャピとはしゃぐこのはを見ながら、そういえば何処に行くか詳しくは決めてなかったなと考え込んだ。
「うーん、遊園地とかどう?」
恐る恐る提案してみると、このはは少し考え込んでしまった。
半年経って、この辺の地理には慣れてきたものの、遠くに出かけることがなかったため、電車や車でしか行けない距離の場所に何があるのかよく分からない。
簡単にいえば、転校してきて半年のために土地勘がないため、学区から離れた場所に置き去りにされたら家に帰れない感じ。
だから何処に遊園地があるのか、ましてはこの辺に遊園地自体があるかすら知らないし分からない。
このははしばらく考えた後、
「…いいよ。
電車で2駅くらいのところに結構楽しいところあるから、明後日そこ行こ。」
とニコリと微笑んだ。
私はその笑顔につられて思い切り頷いて微笑んだ。
とりあえず、約束できて良かったと思い胸をなでおろした。
断られたらもうチャンスはないかもしれなかったから、かなり安心して、でも陽翔くんに告白することを思い出してまた緊張してきた。
学校について教室に入る。
「あーあ、また来週席替えだよ。」
ぷくっと頬を膨らませ、ぶつぶつとそんな文句を言う陽翔くんを見て思わずクスッと笑った。
雰囲気が和んで、少し緊張が解けて、
「ねえ、今日の放課後少し時間あれば、話したいことがあるんだけど…。」
自然と呼び出すことができた。
陽翔くんは何でだろうという顔をしていたけれど、すぐにニコッと笑っていいよと言ってくれた。
第一段階はクリアだ…と心の中で一息ついた。
その日の放課後のことだった。
「それで、話って?」
照れる様子もなくニコニコと笑いながら陽翔くんはそう言う。
呼び出されたら少なからず告白かもしれないと期待するものだと思っていたけれど、鈍感なのかなんなのか、そんなことを考えてるようには感じない。
そのせいでなんだか緊張してきてしまって。
振られたらどうしようとか、それまで考えてなかったことを考えてしまう。
大きく深呼吸をして、吸って吐いて。
「私、陽翔くんのことが好きです!」
そう言った。
普通ならここに“付き合って下さい”とか付け足すのだろうけど、恥ずかしいからか言いたくても言えなくて。
わざと言わずに思いだけ伝えた。
これで満足だと一息ついて、陽翔くんの顔を見ると、頬を赤らめて呆然としていた。
「あの…、陽翔くん?」
声をかけるとハッとして、恥ずかしそうに頬を手で覆う。
「いや、その、俺も美澄さんのこと気になりつつあって…、あの、俺でよければ、その…。」
ハッキリキッパリ言えずに言葉を一生懸命に紡いでいく陽翔くんは可愛かった。
漫画の中のイケメンさんとは違う、可愛くてでもかっこいい感じ。
「…付き合う…?」
疑問形で聞いてくる陽翔くんにクスッと笑ってから、思い切り頷いた。
嬉しくて顔がほころぶ。
それと同時に、心の何処かでひしひしと絶望を感じた。