パッと、このはと宮野智明が仲良さげに話している様子が思い浮かぶ。
雰囲気が似ているし、仲良いのも頷ける。
そして、私とこのはが珍しい組み合わせというのも頷けてしまう。
明るい感じがしなくて、冷たいオーラを纏う私と、暗そうだけど意外と爽やかさんなこのはは、確かに珍しい組み合わせだ。
私は陽翔くんに、
「うん、ちょっとね。」
と笑って答えると、宮野智明の方を見た。
爽やかな笑みを浮かべて友人と話す宮野は、このはとよく似ている。
マジマジと宮野を見ていると、
「あれ?智明のこと好きなの?」
陽翔くんがからかうように聞いてきた。
私はははっと半分呆れて笑うと、
「そうじゃなくて、このはと雰囲気似てるなって。」
とサラッと答えた。
私の言葉に陽翔くんはパッと宮野を見て、確かにと頷いた。
ふと宮野と目が合った気がしたが、うまく逸らしておいた。
宮野は何か言いたげに口を開いたが、チャイムが鳴ってしまったために開きかけた口を閉じ、意味もなく時計を軽く睨んでいた。
朝の会から1時間目の授業を終え一息つくと、やはり宮野がこっちに来た。
「あれ、智明何しに来たの?」
陽翔くんは私の方を向いて、宮野に尋ねた。
宮野はいや、と呟いて頭をかいた。
「最近このはと倉井さん、仲良いでしょ?
意外だったから、なんで仲良くなったのかなって。」
そう言う宮野は少しだけ頬を染めた。
本当に少し頬を赤らめたくらいなため、陽翔くんはその様子に気付いてないようで少し興味なさげに、そういえばと呟いた。
「そういえば、美澄さんと木村って、共通点多いよね。
元々は平内と仲良かったし、平内たち以外の友達少なくて、木村も去年転校してきたばっかみたいだし。」
陽翔くんの言葉に、私は驚き目を見開いた。
言われてみれば、確かに共通点も多い。
よくよく考えてみれば、葵ちゃんは私にこのはについて隠さず話してくれたし、このはと仲良くなることが偶然ではなくて必然であったような。
「まあ、運命なんじゃない?」
ニヤッと笑ってそう言った陽翔くんの言葉は、あながち間違いではないはずだ。
天使様が仕組んだのかもしれないけど、それでもそれが運命であったことに変わりはない。
なにそれと不満げな顔をする宮野に、
「そんなところかな。」
と笑いかけておいた。
あまり納得のいかなさそうな宮野を、陽翔くんは何となく説得したようで、少し3人で話していたらチャイムが鳴った。
このはと仲良くなった成り行きを話すと、静葉ちゃんたちが行っていたイジメについてもバレてしまう。
自業自得なのかもしれないが、まだ解決してない段階で他人に話すのは気が引けた。
だから、「運命だ」と言った陽翔くんの言葉に便乗して、誤魔化した。
そして、放課後のことだった。
「あれ、倉井さん帰らないの?」
戸締まりをしようと鍵を持った先生に声をかけられて、ハッとする。
そういえば、戸締まりはたいてい担任である津島先生がしていたんだ。
静葉ちゃんたちは何かしら理由をつけて、戸締まりを自分たちでやっていたのだろう。
「ちょっと、やることがあって。」
私もそう誤魔化してみると、津島先生はあぁと何か思い出して、
「居残りで勉強?
平内さんたちに誘われたのかな?
頑張ってね。」
と笑って去っていった。
津島先生の話からすると、静葉ちゃんたちは勉強するからと言って、放課後教室に残りこのはをイジメていたようだ。
そこまでする意味が分からないけど、今はそんなことはどうでもいい。
私はいつの間にか教室からいなくなっている静葉ちゃんを、自分の机に腰掛けて待った。