そうして放課後は1人で帰った。

家に帰り少し考える。

イジメの矛先が私に向いたりするのかなと思いきや何もされなかったことについてだ。

もしかしたらこのはがイジメられてるかもしれない。

そう思った私は、「このは大丈夫?今日なんかされてない?」メールを送る。

数十分後にきた返事には、「大丈夫。何もされてないよ。」と書かれていてホッとした。

もしまだこのはをイジメているなら、静葉ちゃんを止めないとと思っていた。

本人に聞いても絶対に答えてくれないだろうからこのはに聞いたけど、何もされていないならそれでいい。

その翌日も、下駄箱には嫌がらせとは言えない嫌がらせのメモが入っていた。

読むのも面倒くさいけど、一応一通り目を通してゴミ箱に捨てておいた。

教室に入り席につく。

昨日と変わらない気まずい空気が流れていたけど、特に気にしたりはしなかった。

夏休みをはさんだせいか、夏休み前までの雰囲気を思い出せず、気まずかろうとどうも思わない。

私は完全に、前々からこんな雰囲気だったような感覚に陥っていた。

「今日は席替えだな。」

ふとそんな声が聞こえてきてハッとした。

もう席替えなんだ、と少し残念な気持ちになった。

せっかく班の人と仲良くなれたのにもうバラバラなんて、と思いながらため息をついた。

それでも、思い返せば夏休みを抜いて2ヶ月ほどこの席にいるわけで、前の学校は1ヶ月に一度席替えだったから、だいぶ長いことこの席にいたことになる。

考え事をしながらまた1つため息をつくと、

「おーい、聞いてる?」

とまたまた声が聞こえてきた。

どうやら私に話しかけていたようだ。

声の聞こえた方、隣の席を見ると陽翔くんが、私が反応したことに対して嬉しそうに微笑んだ。

「あ、さっきの私に話してた?」

一応陽翔くんに確認してみると、陽翔くんは勢い良く頷いた。

「ごめん、何か話あった?」

首を傾げて尋ねると、陽翔くんはパッと顔をそむけて、何でもないと言った。

チャイムが鳴り先生が教室に入ってきて挨拶をして、席替えをすることになった。

くじを引いて席を移動する。

今度の席も前の席とあまり変わらず、窓際の前から3番目だった。

「お、また席近い。」

そう言い前の席に座ったのは陽翔くんだった。

ニコッと笑いかけそうだねと返しておく。

近くに話せる人がいて安心した。

隣の席は女の子で、誰だか分からないけどひとまず頭を下げておいた。

静葉ちゃんや梨乃ちゃんや葵ちゃんとは席は近くはなくて、少しホッとした。

あの気まずい空気は、いくら慣れても心地良いものではないから。

陽翔くんの隣は栞ちゃんで、やたら私にからんできた。

後ろの席とその隣の席の人は、知らない人だから、仲良くなれるように頑張ろうと心の中で自分を応援しておいた。

その日は同じ班になった子と話すことができた。

放課になるたびにやたらと栞ちゃんが話しかけてくるのだが、気にしないでおこう。

陽翔くんは授業中分からないところがあったり、放課私が1人だったりする時に話しかけてくれて、仲良くやっている。

この席でも頑張らないとと自分に言い聞かせ、深呼吸をした。

そして時は過ぎ去り、席替えから1週間経った頃。

このはとは、クラスが同じではないためあまり話す機会がなく、たまにメールでやり取りするくらいだった。

静葉ちゃんたちにも相変わらず避けられていて、帰りも私は早く帰ってしまうため、恐らく1人で帰っているのだろう。

席替えから数日経ってからは、栞ちゃんがなぜか陽翔くんにやたらからんでいた。

ちょっと不愉快だ。