葵ちゃんが去っていくのを見送ってから、もう一度このはに駆け寄った。
「大丈夫?」
首を傾げ手を差し出すと、このはは私の手を掴んで立ち上がった。
パンパンと服についた砂を払いながら、このはは「大丈夫」と答える。
私はこのはの全身を見て、ハッとした。
「足捻ってる。それに腕に傷が。」
このはの足が不自然だし足首が腫れて赤くなっているので、恐らく捻挫しているのだろう。
捻挫したと思われる足と同じ右側の腕に切り傷があった。
「腕のはさっき押された時に、転んで石で切ったんだと思う。」
そう言うとこのはは痛そうに顔を歪めた。
いたた…と呟いて右腕を抑えたこのはの左腕には、薄くなった痣や怪我したの痕が無数にあった。
恐らく以前静葉ちゃんにやられたもの、もしくは他の誰かにやられたものだろう。
私はその傷や痣のことには触れず、
「早く家行こう。手当てするよ。」
と左手をひいた。
このはは嬉しそうに笑うと、ギュッと私と自分の手と手を繋いだ。
そうして無邪気に笑うと、
「よし、早く行こっ。」
とその辺に落ちていたお菓子の入った袋を拾い上げて歩きだした。
が、私の手を引くこのはは明らかに右足を引きずっていた。
「ムリしないでよ。
家にお母さんいるし、迎えに来てもらおう。」
肩を貸すこともできるが、母が家にいるなら、家まで距離があるのにわざわざ歩かせる必要もないだろう。
母に電話して、理由もつけて迎えを頼むと、快く了解してくれた。
その後迎えに来た母の車に乗り家まで行って、腕の手当てをした後、母に車をだしてもらいこのはの家に行った。
そうして転んだということで事情を説明し、病院に行くように言っておいた。
「ごめんね。折角お菓子まで買ってきたのに。」
と申し訳なさそうに言うこのはを、
「いや仕方ないよ。明日にでも遊ぼ。」
と慰めてから、家に帰った。
今日の静葉ちゃんとのことを思い出し、休み明けから大変だななんて呑気に考える。
とりあえず一応今日のことを報告するために、前にもらって今までは飾ってあっただけの御守を枕元に置いて寝た。
私の判断はきっと正しかった、きっと大丈夫だと、自分自身に言い聞かせながら。