しかし、私は確かに自分の部屋で寝たわけで、これは夢としか言いようがない。
だが、頬の痛みが「夢じゃない」と訴えかける。
「…あなた、誰ですか?」
気になったことを声に出してみる。
案外簡単に声は出るし、試しに手などを動かしてみると自分の思い通りに動く。
明晰夢というやつだろうかと考えていると、少年は私の手を握り答えた。
「僕はね、天使だよ。」
「…は?」
ニコニコと天使のような笑みを浮かべる少年とは違い、私は天使と名乗る少年を睨んだ。
お前、大丈夫か?
と言いたい気持ちをグッと堪えて、
「えっと、どういうこと?」
となるべくやんわり質問する。
「僕はね、天使なの。
だからこうして君の夢の中に入ってこれたわけで、決して怪しい者ではないから!」
いや十分怪しいよ、と心の中で突っ込みつつ、私は考えた。
もし本当に彼が天使ならば、私は半年後に死ぬことになる。
私は少し考えて、聞きたいことをまとめてから、天使と名乗る少年を質問攻めしてやることにした。