その日はやることだけやって寝てしまった、はずだった。
***
「…ん?」
ふと目を覚まして起き上がると、私はいつかの日に見た真っ白の空間にいた。
そして私の隣には、
「あ、起きた?」
手を振りながらニコニコ笑っている天使様が座っていた。
天使様が近くにいるのが珍しく、ジッと見ていると、天使様は不思議そうに首を傾げた。
天使様、今思ったけどかなりの美形だ。
「それで、どう?
友達探しは順調?」
その場に寝転がり、頬杖をついて私を見上げる天使様に、私はひとまず静葉ちゃんのことを伝えた。
天使様は自分から聞いたくせに、興味なさそうに適当な相槌を入れるだけだった。
ヒントもくれなければアドバイスもない。
途中これで大丈夫かと確認するような素振りを見せてみるも、スルーされてしまう。
「…なんで、何にも教えてくれないの?
人の人生がかかってるのに…。
静葉ちゃんと私が今友達と呼び合える関係かくらい、教えてくれないの?
客観的に見て、友達と言えるかどうかくらい。」
何も教えてくれない天使様に痺れを切らして問い詰めてみると、天使様はやれやれという顔をして、起き上がり座って私の顔を見た。
天使様の明るい色の瞳が私を捉える。
ジッと私を見る天使様の顔付きに、恐怖からか目をそらした。
「美澄さんにとって、友達って何かな?」
天使様の雰囲気からして、怒られるか責られると思っていたため、予想とは大きく違う質問に拍子抜けする。
しかし、実に天使様らしい質問だ。
私は何も言わずに、天使様を見た。
答えが思い付かないのに、天使様相手に無理に答える必要もないと思ったからだ。
「君は、静葉さんとは友達だと思ってるの?」
「…まあ、一応。」
天使様の質問に、素直に答える。
天使様は私の様子を見て話を続ける。
「…君が助かるためには、相手に信頼されなきゃいけないだろ?
はっきり言って、“親友”と呼べるくらいで、君は相手にとって一番信頼できる人でなくてはいけないんだ。
しかし例えばの話、静葉さんにとって君はただの友達で、一番信頼できる人は他にいて、これから先も君はただの友達止まりだとしよう。
それを僕が伝えたら、君はどうするんだ?
静葉さんはいつも君といて、静葉さんがいると君は他の友達を作りにくい。
だけど静葉さんは君の命を救う“カギ”じゃないからって、君は静葉さんと友達をやめるのか?
客観的に見て友達じゃなかったら、友達に“見える”ように努力するのか?
“友達”は、友達に見えるかが大事なのか?
邪魔なら簡単に捨てれるのか?
そんな友達しか作れない奴が、“本物の友達”を作れると思ってるのか?」
グサリと、天使様の言葉が突き刺さる。
私の考えから遠くて近い。
私は目を伏せて肩を落とした。
そんな私を無視して、天使様は話を続けた。
「まあ、言いたいことは、自分が“友達”だと思ってるなら、周りを気にしないでってことと、
他に友達が作れないのを静葉さんのせいにしないこと、僕に“友達”についてあまり質問しないこと。
僕に聞いたり僕を頼ったりせずに、自分の力で探すこと。
それから、何度も言うようだけど“出会い”を大切にすること。」
天使様はひょこっと立ち上がり、ニコリと微笑んだ。
「そして、焦らないこと。
間違ってることをやらないこと。
以上!」
最後はよく分からないが、天使様は言いたいこと言ってスッキリしたのか、伸びをしてから私に手を振り消えていった。
少ししてから、私は目を閉じて意識を手放した。
とりあえず、今回の天使様の会話で得たことは、“天使様を頼らない”ことくらいだ。
恐らく、自分の力で見つけなければ意味ないのだろう。