まだ中学2年生になったばかりの5月。
引っ越しを明日に控えた私は、疲れ切って部屋に戻り寝ていた、はずだった。
「おはよう、美澄さん。」
ふと声のした方を見ると、ニコニコしながら私の頬をつつく少年がいた。
焦げ茶の髪がサラリと揺れる。
ハッとして起き上がり周りを見渡すも、何もない白い空間がどこまでも続いていた。
さっきまで私は自分の部屋で寝ていたはずなのに、と首を傾げる。
そんな私を見て、少年はニコリと微笑んだ。
「今日は君に言いたいことがあるんだ。」
なんだお前はと言いたげに少年を睨む。
よく、昔のヨーロッパで描かれた絵に出てくるような服を着た少年の背中からは、真っ白の綺麗な翼が生えていた。
パタパタと翼をはためかせた後、少年は優しげな笑みを貼り付けたままとんでもないことを口にした。
「半年後、君、死ぬから!
今日はそれを知らせに来ました!」
いきなりの爆弾発言に、衝動的に少年の頬をつねる。
痛そうに頬を抑える少年を横目に、今度は自分の頬をつねってみた。
…痛い。
夢とは思えないくらい、確かな痛みが頬に走った。