でもそうだろう?

別れた男の部屋に来るなんて絶対におかしい。


何より…

菜央が来れば来るほど、ローズの香りが濃くなって部屋にしみついていくんだ。


そしたら俺は菜央を忘れられなくなる。

前に進めなくなるんだ…。




「……わかった」



俺から目を逸らし一言呟くと立ち上がった。

だけど一、二歩歩いてまた菜央の足が止まる。



「………?」


「榛真…絵なんて描くの?」



その視線はある一点を見つめていて、そこにはあのキャンバスが立てかけてあった。