うっすらと目を開けると菜央の姿が目に入った。


あぁ…俺のじゃなくて菜央の携帯か。

そのまま菜央に目をやっていると携帯を開いた彼女は一瞬固まったかと思うと、俺に視線を向けた。


そして目が合うと菜央はバツの悪そうな顔をした。



鳴り止まない着信音に、菜央はキッチンの奥へと戻りやっと通話ボタンを押した様子。

さっきの菜央の表情で相手は分かった。


聞きたくなくても静かすぎる部屋では菜央とそいつの会話が嫌でも聞こえてくるんだ…。



「ごめん…今、友達の家に居るの。風邪ひいたみたいで…」



きっと“今どこに居るんだ?”と問いただされているんだろう。