「…今日、体育館に入ったとき、センパイの好きな人はコイツだってすぐわかった…」



柳澤くんの手に力がこもる。



「…静香センパイのこと見る、アイツの目を見て、

…両想いなんだってわかった…



ボールがぶつかりそうになったとき、

どーしようもなくイラっとなって…

怒りが収まらなくて…

完全に自分を見失ってた…」




肩の震えもとまった…




でも私からは離れない。




甘えた子供のよう…






「バスケの試合を代わってもらって、

最後、これが決まればってとこまで頑張ったのに…





静香センパイの声が…

オレじゃない名前を呼ぶ声が聞こえて、一瞬動けなくなった…」




撫でる手が止まりそうになる。




「そんとき、我に返って…

オレ、何してるんだろって…

かっこ悪くて…

情けなくなって…

… 逃げたんだ…

女のことでこんなことで、熱くなって…」




フゥと息が漏れる。