Side B 異人種、寂しがり屋の狼の視点

あと数日でまた慌ただしい毎日が始まるというので、
ここぞとばかりに部屋の隅から隅までを徹底的に掃除する。

床のコロコロや掃除機は序ノ口、キッチンの排水溝やら
ユニットバスのカビ取り、冷蔵庫の霜なんかも見逃さない。
我ながら、そこいらの女子よりもできた主婦になる自信がある。

押し入れに頭を突っ込んで要らないものを処分しようとすると、
予想以上にたくさんのものが詰め込まれていた。

ラグビーの茶ばんだメット、ふわふわした毛並みの白いテディベア。

どちらも過去の、思い出。

けれど思いきって捨てるまで、まだ自分の中で決着がつけられていない。
女々しいなと思いながらも、結局再び押し入れの中に思い出たちを閉じ込めた。

小休止にコーヒーを淹れて、なんとなくつけたテレビを
ぼんやりと眺めながら数日前の出来事を思い出す。

ノックもせずに入った部室。
そこに居た連中の驚いた、半ば畏れを覚えたような表情。
座ったらギシギシ言ったパイプ椅子。
丸くなりきった鉛筆で署名した自分の字の乱暴さ。

これから、変えていく。
あのサークルも、自分も、全部。