Side A 新入部員の視点

着なれないタイトなスカートを、冷たい風に煽られながら
やっとこさっとこ目的地に着いた。

ここから、私の新しい世界が始まるんだ。

北国の4月はまだ寒い。桜はおろかまだ雪融けさえ
完全じゃなくて、時々じゃり、と固まった雪に
新品のヒールを突き刺してしまう。

入学式でカーネル・サ○ダースみたいな学長の式辞を聞き、
在校生自らが作ったらしい部活やサークルのPRビデオを見て、
慎ましく入学式は終わった。

着なれないスーツを着て肩が凝っている。
肩を前後に回しながら人知れず嘆息して、ふと
今日行き掛けに大量に配られた(押し付けられた)
サークルの勧誘チラシから、小さな1枚を取り出した。

「Sign College」

簡素なフォントと紹介文、それにマジックインキで描いたのであろう
どこかサブカル的な手のイラスト。

私が、ここにきた理由だった。