シーツで体を包み、スカーレットに寄り添うように座っていたジェイドは小さな声で問いかけた。スカーレットは閉じていた目を開け、「起きている」と答えた。
「前から聞きたいことがあったんだけど」
「何?」
「・・・・・」
「ジェイド?」
ジェイドはなかなか話そうとしない。とても言いにくい話なのは彼の顔を見なくても、醸し出す雰囲気で分かる。彼の体は震えていた。何かに怯えているようだが何に怯えているかはスカーレットにも分からなかった。其れでも意を決したようにジェイドは口を開いた。
「姉さんは・・・・」
其れでも其の先がどうしても言葉にならない。ジェイドの脳裏に裁縫に苦戦するスカーレットの姿が思い浮かんだ。裁縫も料理もできないスカーレット。何も知らない友人達は「不器用だ」と笑っていたが、ジェイドには笑って過ごせるものではなかった。
「ちょっと散歩しない?」
ジェイドが何を聞きたいのかスカーレットには分からなかった。だが、感嘆に口にはできない程、ジェイドが気にかけていることぐらいは分かった。
「でも、姉さんは怪我を」
「大したことはないよ。私も少しだけ外の空気が吸いたいしね」
スカーレットの怪我の状態は気になるが、此のままで黙っていても仕方がないので、ジェイドはスカーレットと夜の散歩をすることにした。
「・・・・静かだね」
誰にも気づかれないように音をたないよう気を付けながらスカーレットちジェイドは体育館の外に出た。外は木々で覆われ、鬱蒼としていた。自然を大事に!が、モットーの校長先生が木をたくさん植えた為、小さな森ができていた。
「虫の声一つしない」
「動物は賢い。大災害の前とかにもこんなふうにいなくなる」
「防衛本能ってこと?」
「かもね」
会話は其処で途切れた。夜の静けさと気まずさがスカーレットとジェイドの間に漂う。今まで、そんなことは感じたことがなかった。一緒に居られるだけで良かった相手だから。会話がなくても気まずさは感じなかった。其れはスカーレットも同じで、だから気まずさを埋める為に会話を始めた。
「ジェイドは、夜が好き?」
ジェイドは逃げていると分かっていても、聞きたいことを聞ける勇気がなく、スカーレットとのいつも通りの会話をすることにした。