「でも、よく考えたらスカーレットさんもラブコメとか考えるキャラではないですよね」
スカーレットが冗談を言い合うところは確かにあまり見ない。ジェイド程ではないが、スカーレットも取っつき難い所があるのは確かだ。
レレナ、ミレイ、アドルフはスカーレットが考えるラブコメがどんなものかをイメージしてみた。だが、イメージに靄がかかり、形にはならなかった。おかげで、スカーレットは難を逃れた。
「アドルフ、あんたがやりなさい」
変わりに差し出されたスケープゴートがアドルフだった。
「え?ええ―――――――っ」
「そうですね。アドルフさんなら面白いのを考えてくれそうですし」
「いや、あの」
「アドルフ、会長命令よ」
「そ、そんなぁー」
アドルフの情けない声が生徒会室に響いたが、彼を助けようとする者はいなかった。ジェイドも相手がスカーレットではないので、涼やかな顔でアドルフに感謝して、話し合いは終了した。
激の大まかな内容は生徒会メンバーで考えた。スカーレットとジェイドの意見を優先し、戦争ではなく学校生活を舞台にした。主人公はスカーレットを除く全員の一致でスカーレットに決まった。そして、会長命令でスカーレットは歌を歌うことになった。
劇は「ラブコメ」と言っている以上は恋愛ものだ。相手役は当然、ジェイド。
スカーレットは学校中で人気がある。其のスカーレットの恋人役は嫉妬の的になる。弟のジェイドなら万が一ということがないので、嫉妬されることがない。そういった理由でジェイドが選ばれた。
アドルフは主人公がミレイで、恋人役が必要な役ではないことにホッと胸を撫で下ろした。
シナリオはジェイドに任せることにして、ジェイドと残りの女性陣は衣装の制作をすることにした。
「意外ね」
「ええ。スカーレットさんって、勉強も運動もそつなくこなすので必然的に何でもできると思っていましたが」
「誰にも欠点はあるものね」
「でもある意味では定番ね」
「嗚呼、確かにそうね。漫画とか小説とかではよく使われるネタよね」
「現実的によくあることを作者が取り入れて、王道とするものかもしれませんね」
「二人とも、好き勝手、言いたい放題ですね」
怒りでスカーレットの片眉がピクピクと上下に動いていた。
「いったぁい」