「あら、素敵な話ね」
アドルフが音読を終えると、ミレイとレレナはうっとりとしていた。王子とハッピーエンドという展開は女の心を掴むには充分だったようだ。対するアドルフは・・・・・
「そうか?何処にでもある普通の話だろ。ちょっと面白みに欠ける」
此のシナリオを使うことに反対はないが、内容自体に感銘を受けることはなかった。
「戦時中に戦争の劇というのはどうでしょう?私はあまり、お勧めできません」
「僕も姉さんの意見に賛成です」
スカーレットとジェイドはシナリオの内容は今の段階で、生徒達に見せるのには反対だった。
「でも、戦争に勝利し、平和になる話なら希望があっていいんじゃないか?」
「・・・・希望?」
「嗚呼」
アドルフの言葉にスカーレットは疑問を抱いた。戦争終結、平和は確かに今の民の希望になるのかもしれない。だが、戦争に勝利することは、人の命が流れる過程によって作られる。結果だ。なら、人の命の上で成り立つ平和とは本当の希望になりうるのだろうか。
「戦争のことを一時でも忘れたいのなら、戦争の話題は避けるべきだと僕は思います」
スカーレットの意見をジェイドは援護した。ジェイドはスカーレットの意思に反することはしないので、ジェイドがスカーレットの側につくのは生徒会のメンバーなら分かっていたことだ。
「シスコンのジェイド君はそう言うと思っていたよ」
「でも、一理あるのよねぇ」
「ラブコメはどうです?」
「誰がシナリオを書くんですか?」
スカーレットはミレイを見た。ミレイとレレナはニッコリと笑って、スカーレットを見ていた。スカーレットは嫌な予感がした。
「お願いね、スカーレット」
ほら、やっぱり。嫌な予感とはつくづく当たるものだとスカーレットは思った。
「姉さんは怪我をしているので僕が代わりにします」
スカーレットは軍人としていつ招集がかかるか分からないので、何もない時ぐらいは休んでほしくて、ジェイドはシナリオの作成に名乗りを上げた。本当はジェイドも面倒な仕事はしたくなかった。だが、大切な姉の為ならと思ったのだ。
「ジェイドには無理だろう。ラブコメなんて」
アドルフはあっさり、ジェイドの意気込みを折った。