「衣装がかなり多いけどな。おまけにボロボロ」
「長年、倉庫にほたっていたからね。でも、修理すれば使える物もありますよ」
段ボールに入っていたものは段ボールごと埃を被っていた。
「此れで何をしましょう?」
「そうねぇ」
ミレイは人差し指に顎を乗せて考えた。やりたいことは幾らでもある。でも、其れを全て現実にすることはできない。今ある物でできること、尚且つ生徒の心を癒すことのできるものは何か。束の間、現実を忘れられるものがいいとミレイは考えた。
 ミレイの脳裏には過去、学校で行ったイベントが蘇っていた。中でも印象に残っているのは去年の合唱祭だった。
嫌がるスカーレットを無理やりステージに立たせ、生徒会のサプライズとして一人で歌わせた。誰もを魅了する美しい姿と洗礼された歌声に誰もが現実を忘れ、彼女に夢中になった。
「何ですか、会長?」
昔のことを思い出していたミレイは気が付けばスカーレットを凝視していた。此処まで、凝視すると、視線に敏感なスカーレットじゃなくても気づく。
見られていたスカーレットは怪訝な顔をしてミレイを見つめ返した。
「劇と歌をしない?」
スカーレットの問には答えず、ミレイはいきなり本題の答えを提案した。
「劇ですか?でも、何を?」
「シナリオなら一冊だけだけど、段ボールの中に入っているぜ」
かなり埃を被っていたせいでアドルフがシナリオを取り出すと、埃が宙に舞い、段ボールに注目していた彼らは咳き込んだ。
「其れで、市内路の内容は?」
「ええと」
アドルフはシナリオを開き、文字を目で追い、みんなにも内容が伝わるように音読を始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・シナリオ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 黄金の髪に蒼天の瞳をした美しい村娘。彼女は誰からも愛されていた。彼女自身も、心の美しい人だった。子ども達を集め、得意な歌を披露したりと、彼女は幸せな毎日を送っていた。しかいs、彼女はある日、神の天啓を受けた。其れが彼女の運命を大きく変えた。
彼女は神の愛娘となり、戦争に行くことになった。彼女が告げる神のお告げ通りに軍や国政を動かすと、戦争には勝利を、国には恵みをもたらした。誰もが彼女を讃えた。彼女は勝利の女神であり、神の愛娘だと。
彼女は其れから幾度も戦場に赴いた。国民の為、愛する故郷の為に戦ったのだ。そして、此の世から戦争がなくなった時、彼女は自国の王子と結婚をし、幸せに暮らしました。
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