薫さんに連れて行かれたのは、レストランではなくて、広い喫茶室のような所だった。

『職員用の食堂』だと説明されたけど、明るい木目調の4人掛けの丸テーブルもお揃いの椅子もテーブルウェアもおしゃれで、食堂と言うよりは『喫茶ルーム』の方がしっくりくる。

さすが、地元でも有数の大きいホテルだ。

こう言う所で働けたら、やりがいあるだろうなぁ……。

そんなことを考えながらしみじみと観察をしていたら、部屋の入り口のカウンターから戻ってきた薫さんが、持っきたトレーをテーブルに置いた。

「これ、おすすめなのよ。ここのシェフのお手製マフィン。良かったら、味見してみて? それと、これも絶品、コーンポタージュ」

ニッコリ笑顔で置かれたトレーの上には、ほかほか温かそうなマフィンと、コーンポタージュが乗っている。

湯気とともに立ちのぼる、マフィンとコーンポタージュの甘い臭いが、食欲中枢を刺激した。