言葉尻は丁寧だが、態度は究極に慇懃無礼(いんぎんぶれい)

祐一郎さんの小ばかにした態度に、高崎さんは顔を真っ赤に上気させて目を吊り上げる。

まるで、般若(はんにゃ)だ。

「な、なにを無礼(ぶれい)な!」

「無礼は、そっちだろう?」

答える祐一郎さんの声がさらに低くなる。

「ああ、違うな。同意を得ていない女性を壁に押し付けて襲うのは、無礼とはいわない。ただの婦女暴行だ」

「そ、その女が誘ってきたんだ! 連れが帰ってしまったことに付け込んで『お小遣いをくれれば相手をする』といって、迫ってきたんだっ」

「えっ……?」

いきなり攻撃の矛先(ほこさき)が向けられた私は、驚いて目を丸める。

「ここは風俗まがいのサービスをしていると、警察に訴えてやるぞ!」

自分の考えに酔ったように、高崎さんは顔を歪めてニヤリと笑う。

私は、もう見ていられなくて目をそらした。

自分を悪者にされた怒りからではなく、仮にも一度は愛した人の変貌ぶりが哀れで、悲しくて見ていられなかった。

何が、この人をこうも変えてしまったのか。

それとも、ただ、私が彼の本性を知らなかっただけなのかは分からないけど。

今、目の前にいるのは、私が知っていた高崎和彦ではなかった。