険しい表情の祐一郎さんんが無言でつかつかと歩みよると、突然の第三者乱入に驚いて私を壁に押さえつけたまま固まっている高崎さんの肩をつかみ、力任せに私から引きはがす。

そのまま、バランスを崩して腰を抜かしたように、高崎さんは後ろに倒れこんだ。

足の力が抜けていた私も座り込みそうになるが、床にへたり込む前に祐一郎さんが支えてくれた。

一瞬、ぎゅっと抱きしめられて「平気か?」と耳打ちされる。

その声があまりにやさしくて、思わず鼻の奥がつんと熱を帯びる。

――だめだ。ここで泣いたら、絶対ダメ。

こみあげるものをぐっとこらえて、コクリと小さくうなずいた。

「な、なんだお前ら、客に向かって無礼だろう!?」

やっと自失から脱却したのか、ヨロヨロと立ち上がった高崎さんは、目を吊り上げて上ずった声で怒鳴りだした。

初めて聞く敵意むき出しのその声と姿に、思わず恐怖心を刺激されビクリと小さく体が跳ねる。

祐一郎さんは『大丈夫だ』というように、もう一度私を抱える腕に力を入れてから、静かに口を開いた。

「お客様。うちは健全なラブホテルですので、こういったサービスは致しかねます。ルームサービスにきた従業員に手を出すほど女性に不自由しておられるのなら、お金を出せば喜んで相手をしてくれる店におでかけになってはいかがですか?」