効果はあったが、自分自身のおでこも地味に痛い。

それでも私はすかさず身をよじり、ベッドの下に滑り落ちるように逃げ出す。

そのまま立ち上がるとドアに向かって猛ダッシュ!

と、言いたいところだけど、情けないことに半分腰が抜けかけていて、実際にはヨロヨロと歩き出した。

「このっ……」

背後から怒りを含んだ声がせまってくるが、振り返る余裕はみじんもない。

ソファーセットの横を抜けて、ドアに向かって一目散。

でも、たどり着く前に後ろから右の二の腕を強い力でつかまれて、そのまま、力任せに壁に背中を押し付けられる。

「ふざけたマネをしてくれる」

怒りを含んだ言葉と視線が至近距離で浴びせかけられ、この期におよんでさすがに危機感がわいてきた。

力を入れてみても、身体全体を使って抑え込まれているため、身動きできない。

頭を固い壁に押し付けられているから、もう、同じ手は使えないだろう。