『ムリムリ~♪ どうせムリなら、さっさと大学なんかやめちゃえ~♪ その方が楽ちん楽ちん』
久々に登場した黒悪魔茉莉を、白天使茉莉が頬をふくらませてたしなめる。
『大丈夫。思い描けることは、叶うもの。夢に向かって頑張るのよっ』
――うん、頑張る。
車を使えない分、今度は自転車と公共の交通機関を利用すればいい。
まあ、夕方五時の出勤時はともかく、深夜二時の退社時はちょっとばかり自転車は心細いけど。
ここからなら、自転車でも二十分で行けるはず。
うん、大丈夫。たぶん……。
リビングに亀子さんの水槽をセットしたあと、荷ほどきに専念しながら、そんなことをつらつらと考えていたら、荷物運び担当の男性陣が部屋に戻ってきた。
最初に入ってきたのは、スマイリー主任。次に、お父さんと不動社長が何やら話しながら入ってきた。
それぞれ、持っていた段ボール箱を重ね終えると、スマイリー主任がウーンと伸びをして言った。
「さて、これで荷物は全部だね」
「あ、はい、ありがとうございました。おかげで助かりました」
私はそう言って、社長とスマイリー主任に、深々とお辞儀をした。
「いやぁ、本当に助かりました。お二人ともありがとうございます。茉莉、何か冷たい飲み物でもお入れして」
「はい。お二人とも、アイスコーヒーで良いですか?」
二人に問えば、スマイリー主任は「お、ありがたい。実は喉がカラカラで」と笑顔で、不動社長は「ああ」とあいまいな表情でうなずいた。
――あれ?
どうかしたのかな、社長?