「へえ、亀、飼ってるんだ?」

私が両腕に抱えていた水色バケツを覗き込んだスマイリー主任が、驚いたように目を丸める。

「おおっ、けっこうでっかいね、この亀。もしかしてミドリガメ?」

「あ、はい、そうです。主任、亀に詳しいんですか?」

亀子さんサイズの大人のミドリガメは、甲羅の色が子亀のように鮮やかな緑色をしていない。

どちらかというと茶色が強い緑暗色で、この甲羅の色と二十センチを超える大きさを見て「ミドリガメ」とわかる人は少ない。

自分で飼っているのでなければ。

「俺はそれほど。社長の方が詳しいですよね?」

話を振られた不動社長は答えず、ニコリと爽やかすぎる笑顔をスマイリー主任に返してから、父に向きなおって言った。

「今日は、私とこの佐藤で荷物を運ぶのを手伝います。どれから運びますか?」