自室に戻った私は、いそいそと着替えをはじめた。
お気に入りの淡いアイボリーのブラウスと、はき慣れたジーンズ。
肩甲骨までのストーレートの髪は、ポニーテールに。
ほんのり、ピンクのリップを塗って。
鏡の中の自分に、笑いかけてみる。
母譲りの片えくぼ。
父譲りの、ちょっと垂れ加減のドングリまなこ。
決して美人じゃないけれど、私は、自分のこの顔が好きだ。
――うん、大丈夫。
自分を好きでいられるうちは、まだ大丈夫だと、そう思う。
「亀子さん、行ってくるねー」
居間のサイドボードの上、
九十センチ水槽の中で、ほにょーんと、朝の甲羅干しをしている亀子さんに声を掛け、私は元気に歩き出した。