――プルルル。
「ひゃっ!?」
突然鳴り響く着信音に驚いて、危うく、スマートフォンを落としそうになる。
一瞬、『高崎さん』から掛かってきたのかと、どきりとしたけれど、着信窓には友人の美由紀の名前が表示されていた。
谷田部美由紀。
高校で仲良くなった友達で、同じ大学に進学した美由紀は気の置けない、まあ言うなれば『親友』だ。
「ちょっと、茉莉、あんた大丈夫なの!?」
電話を耳に当てたとたんに響いてきた大音量のハスキーボイスに、思わず苦笑いする。
「何が?」
「何がじゃないわよ、水くさい。お父さんの会社が大変なことになってるなんて、あんた、一言も言ってなかったじゃない!」
って、私も昨日まで知らなかったのよ、美由紀ちゃん。