結婚の意思を彼から告げられたとき、正直言うと、私も、すぐには決心がつかなかった。
まだ学生だし、なにより、私には叶えたい夢があったから。
でも、その迷いを告げたとき彼は、『結婚したって、夢は叶えられる』と、その夢ごと私を欲しいのだと、そう言ってくれた。
彼は、今の私にとって、心強い最大の味方だ。
『大事な話がある。今日の昼12時に、ホテル・ロイヤルの展望レストランで待っている』
――ホテル・ロイヤル?
婚約の時使った、結婚式場がある全国チェーンの、大きなホテルだ。
『大事な話』
やっぱり、お父さんの会社のことだろうか?
それとも、別のこと?
こんなふうに、呼び出しを受けたことは、初めてだ。
それに、いつもとは違う簡素な文面に、何故か、胸の奥がザワザワと騒いだ。