そうして私は、ごく自然に、『絵本作家になりたい』と思うようになっていた。
『お母さん、私、大きくなったら絵本を作る人になるの! そして、お母さんに、たくさんたくさん、絵本を読んでもらうの!』
あれは小学一年生の時だったか、
学校で将来の夢についての作文を書いてきた私が、家に戻るなり勢い込んでそう言うと母は、『それは素敵な夢だね。叶うといいね』と、とても嬉しそうに笑ってくれたものだ。
その夢に、一歩一歩近づいているはず、だったのに。
「お母さん……」
亀子さんの水槽の隣。
サイドボードの上で微笑む母の写真を見詰めながら、ぽつりと呟く。
その母の笑顔は、昔と何も変わらない。
変わったのは、そう、私たちだ。