つぶらな瞳は、本当に何でも知っているように見える。

『そうよ。元気をださなきゃよ!』

亀子さんが、そうエールを送っているかは定かではないけれど、

とにもかくにも私は、こんがりと狐色に焼けた朝食のトーストーを、大きな口をあけて『サクッ』と食んだ。

今の美大に入ったのは、絵本作家になりたかったから。

それは、大好きだった母の影響だ。

幼いころから寝る前にはいつも、絵本を読み聞かせてくれた、母。

絵を描くのが好きだった母は、よく自分で画用紙に描いた手作りの絵本を読んでくれた。

シンデレラや人魚姫、それに白雪姫。

色々な童話がミックスされたような奇想天外な物語に、寝るのも忘れて聞き入ったものだ。

注がれる優しい眼差しと心に染み入る温かいお日様のような母の声に包まれて、眠りに落ちるあの瞬間が、どんなに心地好かったか。

母が亡くなった今も、その思い出はたくさんの物語と共に、今もなお色褪せることなく私の心の一番柔らかな場所で息づいている。