そう。私は知っていたんだ。

あなたが決して私のものにはならないことを。
あなたの目が、私ではない記憶の中の誰かを見つめていることを。


気付いていたのに、気付かないふりをして笑っていた。心のどこかで、あなたを信じたいと思いながら。




「最近、よく降るね。」

窓を叩く雨粒を眺めながら私が呟くと、あなたは、うん、と上の空で返事をした。

「もう少ししたら、小降りになるかな。」

また、うん、と適当な返事。

雨が降ると、あなたは決まって遠い目をして上の空。目の前にいる私のことも、見えていないみたい。

「雨、止むかな。」

私の問い掛けは、あなたが返事をしてくれないと、ただの独り言に変わる。雨の日のあなたの世界での私は、まるで透明人間。


「明日は晴れるといいね。」