いとしま、なんて。
名字で呼ばないでよ泣きたくなるから。
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あれからどうしたのか。
薄っすらと目を開けると見覚えのある白い天井。
深呼吸をするといつものアルコールっぽい匂いに安心する。
あぁ6時間目だったのに。
あとちょっと我慢すれば終礼だったのに。
一日に2回も保健室にお世話になってしまった日は、さすがに情けなかった。
「あ、起きたー?」
声のほうを向くとみちるちゃんがこっちに歩いてきた。
白衣に七部丈のスカート。パリッとしたストライプのシャツ。甘さのない品の良さは憧れずにいられない。
みちるちゃんは、屈託のない大きな目で私を見た。
「体育久しぶりだったもんねぇ。ちょっとはしゃいじゃった?」
「はしゃがないでしょ……。あーもー」
「どうしたどうした」
「倒れ癖がなおらない……」
「あはは。糸島小唄の生態はなぞだねぇー」
「……」
その回答でいいのか保険医、と心の中でつっこんで、でもその深刻じゃない受け答えに安心してる。
「まぁ、そんな日もあるよ」
そう言って彼女は私の頭を撫でた。
「……みちる先生」
「ん?」
「さっきまでここに市野先生いた?」
訊くとみちるちゃんは、にまりと笑う。
「さすが。よくわかったねぇ? あなたをここまで運んでホームルーム戻ってったよ。王子っぽくて現れた瞬間吹き出しちゃった」
「……」
膝裏と背中がむずがゆかった。