「……みちるちゃん何か言ってた?」
「お前がまわした手紙のせいで、香月先生が口きいてくれなくなったって嘆いてたぞ」
「うわぁ……」
みちるちゃんはあの、美人だけど音読が下手な国語教師、香月先生のことが好きだ。というか、誰も知らないけど二人は恋人同士だ。
休日のファッションやカラオケの歌声、うたたねのイビキ。そんなことも知ってるんだっていう生々しさでみちるちゃんの話を聴いているのは、いつもなかなかつらいものがあった。その上みちるちゃんは香月先生のファッションセンスを心の底から馬鹿にしながら指摘しないし、愛は歪んでいて、本当につくづく残念な美人だと思う。残念な美人カップル。
みちるちゃんにもあの時、「人の恋路は邪魔するもんじゃない」と軽くお叱りを受けている。
「お前が、あの手紙で俺とみちるをくっつけようとしてきたときは、さすがにどんな発想だよって思ったけど。香月先生のことも知ってたしそんなことにならないってわかってただろ」
「噂になって、お互い意識しだしたら変わるかもなって思ったの」
「お前意外と馬鹿だよな……」
「……みちるちゃんなら、我慢できるかもしれないなぁって。久詞と一緒にいても」