二人はデキているのに、どうして市野先生は今日。
あの真っ赤な舌を思い出す。
目を覚ました瞬間、ぼやける視界で間近にあった先生の顔は、口を開いて私を食べようとしていた。と、思う。
寝ぼけてたのかな? とも思った。
確かめたくて率直にキスしようとしたか訊いてみた。
引き当ててしまった。
寝ぼけまなこで見た真っ赤な舌は確信に変わった。
だって先生は、嘘をつくとき必ず目をそらす。
茶化して目を見て、
〝馬鹿だねぇ〟
くらい言ってくれれば、
〝すみません馬鹿でしたぁー〟
って、言えたんですよ。
先生?
ドヤ顔してる場合じゃないんですよあなた。
みちるちゃんといちゃついてる場合でもないです。
いつ訊こう。
そんなことを考えていたから、私は今日も世間を知らずに一日の授業を終えて行く。