今日の5時間目は選択科目だった。

卒倒しがちな私が保健室にいる間に希望調査が行われた選択科目は、私が一番苦手な政治経済に決まっていた。

一階のあまり使われていない教室で、20人にも満たない生徒と先生が教科書に視線を落としている。解説はちっとも頭に入ってこなかった。

自分でもよくないことだと思ってはいるけど、世の中のことにまったく興味が持てない。



(それは多分、)



考えて、結論が出せそうになったところで思考を止める。

一階の教室の窓からは中庭が見えた。
みんな教科書を追っているから、一番後ろの中央の席で私は堂々とよそ見をすることができる。


また移動だろうか?

市野先生とみちる先生が並んで歩いていた。





私が学校で話す先生の2トップ。

副担任の市野先生はさっきまでのカッターシャツにジャージ姿をやめて完全にジャージ姿になっていた。次の時間は体育だ。

みちる先生はいつも通りの白衣。生徒たちから魔女みたい、と言われるのは、ミステリアスな雰囲気もあるけど綺麗だからじゃないかな、と思う。

うちって綺麗な先生多いんだな。

たまにみちるちゃんって呼んでしまうほど先生といる時間は多い。私がよく保健室にいるからだし、迷惑をかけているからだけど、それはラッキーなことだったと思う。

あんなにうつくしいのに中身が残念なみちるちゃんのことが、私は大好きだ。




私の大切な二人は、どこへ行くのか、談笑しながら校庭を横切って、正門のほうへと歩いていく。

そのときの二人の顔は、私が知っている顔とは少し違っていて。まるでお互いが特別みたいに、二人は進行方向を向いたまま自然に笑っていた。




たぶん、市野先生とみちるちゃんはデキている。