大人の余裕なのかまんざらでもないのか何なのか。噂が流れても二人に変化は見られない。
「いやーでも手紙でこう学校のゴシップがまわるかんじさー。やれみんな携帯いじってると思ってたら意外とかわいいとこあるよねー」
「かわいいか……?」
「だってちまちま文字書いてるわけでしょ? 糸島ちゃん、そのまわってた紙持ってきてくれたらよかったのに」
言われてドキリとする。
とっさにそばに置いた自分の鞄を意識してしまう。ばれないように、そっと意識を鞄から剥がした。
「無理ですよ。最後誰にまわったかまで追えませんし」
「え、お前まわしたのか!」
「まわしただけです」
サイテー! とわざとらしく言う市野先生のことは無視して、みちるちゃんのほうを向く。
「でも……なんの理由もなく噂にはならないんじゃないですか?」
火のないところに煙はなんとやら。
暗にそういうことを匂わせて言ってみると、予想外に魔女は目をぱちくりさせていた。
「……糸島ちゃん」
「はい」
「それってヤキモチ……?」
「ちがっ」
自分の意図するとられ方とはあまりに違って慌てて否定する。
視界の端で頬杖をついていた市野先生が音にせず「馬鹿」と言った。