手紙がクラス中をまわったのは三時間目。

お昼休みを挟んで五時間目には噂が四方のクラスに飛び跳ねて、市野先生は六時間目の一年生の体育でそのことを聞かされたという。




「なんかもう今日疲れたわ……帰ろうかな……」

「昨日も早かったのに?」

「それはお前を送ったからだろう」

「久詞最近教頭に嫌われてるよね」

「えっ、嫌われてんの?」



帰ろうかな、なんてまた市野先生がぼやいている。ここは保健室。




「……あんだけ噂になってて保健室に来るって、神経太すぎませんか?」

「なにそれ褒めてんのか糸島」

「まぁ普通避けるよねー。別に久詞が困る分にはいいけど人の迷惑も考えてほしいよね!」

「みちるお前……」



みちるって呼んだ。



それだけのことではっと市野先生のことを見てしまう。浅はかだった。

気付いた市野先生がにやりと笑うから死にたくなる。




「避けたほうが余計噂が大きくなるんだよこういうのは。糸島がいるんだし俺がここに来るほうが自然なことだろ」

「ふふふ。糸島ちゃんが久詞をひきよせてんのねー」



磁石みたいね、とみちるちゃんは笑った。