付き合ってた?
誰が?
……〝俺たち〟?
「……はッ」
つい鼻で笑ってしまった。
「いやいや」
「いやいやいや」
「先生は鼻で笑われて結構傷ついています……」
「いや、だって。それだけはないでしょう」
「なんで? 先生と生徒だから?」
そうですよ。
なんでそんな当たり前のこと訊くの。
「……付き合ってた、って」
「もちろん周りには内緒でだけど」
「うそ」
「うそじゃない」
「うそだよ」
「本当だ」
「っ」
水掛け論だ。
だけど絶対に私は信じない。
「……そんなこと、本当なら忘れるわけないじゃないですか」
「だから俺も困ってるんだ。こんなきれいに付き合ってることだけ忘れてるなんてどうしたらいいんだ?」
「知りません」
「思い出してよ」
信じない。
熱い目で見られたって、絶対に。
「糸島」
その声がはっきりそう発音しただけで、くらくらするのなんか錯覚だ。